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何でもするから羅小黒戦記の無限師匠を見てほしい

前置きをする時間も惜しいので本題から入ろうと思う。先日、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で審査委員会推薦作品にもなった羅小黒戦記をご存知だろうか。

更にもっと言うなら無限師匠をご存知だろうか。
トレンドにナウい方ならもうきっとご存知だろう。インターネットの重箱の端であるこんなブログを見てる人はいないと思うので、今回は一方的に羅小黒戦記と無限師匠がとんでもなかった話をさせてほしい。(※以下、軽いネタバレ注意)

何を隠そう、わたしは美しい男が何よりも好きだ。西に美しい男がいると聞けば行ってソシャゲをDLし、東に美しい少年がいると聞けば行って十二国記を3日で読んだりする。多分前世は美しい男だけのタージ・マハルみたいなのを作って侍らしていた王侯貴族だ。
そんなわたしも、かねてより耳にしていた噂の美しい男の姿を、ついに拝むことが適ったのである。

この月をバックに佇む、富士額とデコルテが美しい青年こそ、無限師匠である。

必ずや映画館で無限師匠の姿を一目見んと、日々の苦節に耐えていたわけだが、上映が始まった瞬間、ある重大なことに気がついた。
なんと「無限師匠が美しい」という前情報しか知らないまま、劇場に来てしまったのである。羅小黒戦記の時代背景や世界観、基本設定などを調べることを失念しており、煩悩に背中を押されるがまま映画館まで来てしまったわけだが、結論としては何ら問題はなかった。
なぜなら羅小黒戦記は最高だからだ。世界観は映画が進むにつれ自然に観客の頭に入ってくる脚本になっているし、そこに過不足はほとんどないと言っていい。
例えば冒頭のシーンだと、自然豊かな森に住んでいたはずの小黒が住処を追われ、人里を彷徨うことになった経緯や、一見小さな子猫の小黒が人智を超えた生き物であることが、語られるのではなくて見せられる。それが説明くさくなくて、非常にテンポが良いのだ。これが凡作であれば、15分くらい森での暮らしをナレーション付きで見せられていたかもしれないが、羅小黒戦記は違う。その15分を無限師匠との時間に費やしてくれるのである。羅小黒戦記は最高だからだ。

そして無限師匠である。

わたしは羅小黒戦記のあらすじを、勝手に「強い人間に憧れる小さな猫チャン!果たしてこの猫チャンは憧れの師匠を超えることができるのか?!」みたいな感じだと思いこんでいた。実際は小黒と無限師匠の初対面は印象最悪な形で迎えてしまうことになる。
かくいうわたしも「美しい人、どうして…………」と戸惑っていたのだが、美しい人にも理由―ワケ―があるのだ。

無限師匠は最高だ。なぜならすごく強い。無限師匠にかかれば渾身のパンチも猫パンチだし、コンクリート砂の城だし、なんなら空も飛ぶ。ちょっとの事では動じないし、人間の身でありながら妖精達から尊敬され、また恐れられている。
そんな無限師匠が更に最高な理由を、以下に示したい。

①びっくりした時に赤ちゃんになる

いつも冷静な無限師匠であるが、それでも驚いたり困惑した顔を見せたりする。ただそれが無限師匠の場合は赤ちゃんみたいな顔になるのだ。美しい横髪が顔の横で揺れており、狼狽することは滅多にない無限師匠が、赤ちゃんみたいな顔になっている。可愛くてシンプルに最高なんだよな。


②意外にドジっ子である

こんなに強くて美しいのに、方向音痴で料理が下手だ。でも味音痴ではないから、咀嚼しようとして一口噛んだものを口からポロっと落としてしまうのが赤ちゃんみが高い。お金を濡らして使えなくなってしまったり、スマホを水没させてしまったりする(多分機種はファーウェイだ。わたしもファーウェイのnova lite3を先月便器の中に落としてお陀仏させたからわかる)。
そんな使い古されたドジっ子ネタで落ちるわねねえだろと高をくくっていると痛い目を見るだろう。なぜなら無限師匠は最高だからだ。


③美しい

無限師匠は美しいのだ。美しい男が美しい声で美しい中国語を話している。それだけで約束された勝利の美だ。
さらに無限師匠は美しいので、笛なんて楽器を吹いてみせたりする。月をバックに登場したかと思うと、風流まで解すらしい。さすが雪月花発祥の国だ。美を“理解”っている。星降る夜の海で、夜風に吹かれながら笛を吹く無限師匠はもう、なんというかアジアンビューティーだ。わたしがアジエンスの社長なら無限師匠を広告に大プッシュしていた。
小黒は、無限師匠との一連のやり取りや、こういう穏やかな一面を見て、この人は本当に悪い人なのだろうかと、自分の認識に疑いを持つ。そこにほとんど言葉はいらず、自然で見事な人物描写だと思う。無限師匠は美しいが、口下手なのだ。

無限師匠はわたしに、美しいとはどういうことかを教えてくれた。美しいとは優しさであり、たおやかさであり、苛烈さであり、穏やかさであり、しなやかさであり、愛情深いことなのだ。そして愛とは、一緒にいたいと思う気持ちなのだ。



花の妖精だったのか?


ご覧の通り、無限師匠に心を乱されまくって大変なのだが、羅小黒戦記は魅力的ものがたくさん詰まっている。
コミカルとシリアスの絶妙なバランスもそうだし、赤ちゃんみたいな無限師匠がカカオ30%のハイミルクチョコレートだとしたら、物語の主軸はカカオ80%くらいのビターチョコレートだ。今回は物語の核心に触れるのを避け、無限師匠にフォーカスを当ててしまったが、無限師匠と物語の円環が美しいのと同様に、諦観に満たされ、円環を結べず、どこにもいけない人もまた美しいから不思議だ。切なさや物悲しさが心の琴線に触れるどころがギターで掻き鳴らされるし、円がモチーフに劇中使われているように、無限師匠と小黒の物語は大きな円になって起点と終点を結ぶ。わたしは友達と観に行ったのだが、あと8億回見たいと思い、「次の回、24時からだけど見るよなァ?!!?!」と、生まれて初めて同じ日に2回同じ映画を見た。無限師匠が最高だったからだ。始発までカラオケで「一生一緒にいてくれや」を二人で歌った。一生一緒にいてほしかったからだ。
羅小黒戦記は魅力的なキャラクターしかいないので、願わくば明日から4クールの枠で放映されてほしいが、そう都合よく世界はできていない。
しかし、人里と共存してたフーシー一派の話とか、皆に受け入れられる前の無限師匠の話とか、激ツヨ美少年ナタ様の話とか、かわいいシュイちゃんのほのぼの話とかあるはずだしどこかで見たはずなのだ(キモオタ柱・キモの呼吸・幻覚)。
続きが超絶見たいし、聞くところによると元々動画サイトに投稿されたものであり、次回作も計画されていると聞く。歓喜すると同時に、乗り換えなければいけない自身の課題も浮上してきた。

言語である。

ついにわたしの中で、萌のために英語以外の外国語を習得するという契機が訪れてしまった。なぜなら、中国語ができた方が、本国のファンアートや刊行されてる書籍を楽しめるかもしれないのだ。少しだけ検索してみたが、中国語がわからないので悔しい思いをした。世の中の、日本の漫画やファンアートが好きな外国の方は、こういうフラストレーションを抱えている人もいるのかなと思った。
出来心で「無限師匠 美しい」「ムゲン師匠 美しい」とTwitterを検索してみたら、わたしが単に検索下手なのかもしれないが、あまりヒットしなくて悲しかった。これも然るべき言語と然るべき方法で検索したらもっと情報を得られるのかも知らない。
また、字幕のこともある。外国の映画を見るときに、字幕は大きな役割を果たす。例えば、無限師匠がぶっきらぼうに見えてそうではないのかもと思うのは、言動に加え字幕の「おいで」「大丈夫」「いいよ」や、名前を呼ばれたときに「はい」と答えるとった柔らかなニュアンスの母国語でも判断したからだ。これらのセリフが本当はどんなニュアンスなのか、分かったほうが二倍楽しいかもしれない。自分は気になります、なぜならオタクだから。
これは余談だが、エンドロールのかわいい歌で「ちんちん」と聞こえる単語が繰り返されており、とても良い余韻に浸ってるのに涙が出るまで笑いを堪える事態となり、知性が完全に負けて愚かで悔しかった。後日、フォロワァさんから「静かに、そっとみたいな意味があります」と美しい意味を教えてもらい、わたしは自分の不見識を心から恥じた。
十年前、中国に修学旅行に行った際に、北京の学校を訪れたことを思い出す。学生の皆は図画の時間に日本のキャラクターを描き、こちらの付け焼き刃の中国語を使う間もなく流暢な日本語で話してくれていた。
母国語に甘んじられる時代はもうとっくの昔に終わっていたが、ついに身に滲みて実感する時が来た。ただそれだけのことである。

羅小黒戦記をまだ見ていない人は、劇場へ観に行って欲しいが、どうにも先の見えない問題で気軽に人様にGOと言える雰囲気ではないのは重々承知である。休館中の映画館もちらほら見かける昨今だ。
かくいうわたしも、心から楽しみにしていたTHE IDOLM@STER SideMのプロデューサーミーティングに現地参加する予定が、残念ながら中止となってしまった。
そのために10月から約5ヶ月の間、実習やらテスト勉強に追われ夜12時過ぎまで勉強や作業をする生活を頑張っていたのに、泣くほど落胆した。同じような境遇の人は数多にいらっしゃるし、演者、関係者の方々の気持ちを思うと、到底計り知れない。何より、人々の楽しみを支えるものを生業にしている方のことを思うと、心配という言葉では到底表せられない。
娯楽とは、人々が生きるための力であり、希望であり、善く生きるための指標であり、知との遭遇であり、人の生活に欠かせないものである。
娯楽に限った話ではないし、言っても言い切れないのでこれ以上述べるのは避けるが、美味しいものをたくさん食べて、よく寝て、温かいお風呂に入って、好きなものを見て乗り切りたい。


ちなみに無限師匠の「おやすみミャオ」という、アイジャヨ=ダンブルドアでも大声を出して暴れたくなるようなお歌のサビ部分を、二回繰り返したら約20秒だ。手洗いうがいでも最高になれる。ありがとう、ビッグラブ。ありがとう、無限師匠。



追記 2020/11/17
チラ裏のつもりが吹替版公開にあたりじわじわ読んで頂いているようで……!? この作品が中共プロパガンダではないかという意見も見られるようになりましたので、わたしの立場を明記させておこうと思います。この愛を祈り模索しようとする作品が多くの人に愛されることを願っています。
https://fusetter.com/tw/4Tavt3Xn#all